皆さんは「パントテン酸」という栄養素をご存知でしょうか。
これは私たちが普段口にしている身近な食品に含まれている栄養素なのですが、近年その栄養素が美肌を保つうえで最も厄介な敵であるニキビをケア、予防してくれる働きがあるということで注目を浴びています。
従来のニキビケアや予防法とパントテン酸による予防法は何が違うのか。
パントテン酸を取り入れるにはどういった方法があるのか。
今回はニキビができる原因やパントテン酸を効率的に摂取する方法も含めて専門的にご紹介します。
目次で確認
ニキビができる原因とメカニズム
さて、ニキビ対策の前にニキビとはそもそも一体何なのかについて説明します。
私たちは一般的にニキビや吹き出物という通称を使っていますが、正式には尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)という立派な皮膚疾患です。
ただ、この疾患は全国的に見て約90%の人が生涯の中で一度は経験するものであることから「放っておいても治るものだし…」と軽く見られがちです。
しかし深刻な病害をもたらすことが少ないとはいえ、皮膚疾患であることに変わりないのでしっかりとケア方法や予防対策を立てなくてはいけませんよね。
そこでニキビができる原因から細かく説明していきましょう。
ニキビが発生するメカニズム
- 汗や皮脂を分泌している毛穴が、過剰に産生された皮脂や不要となった角質の老廃物などによって塞がれ、詰まりが生じます。
- 毛穴が詰まったことにより面皰(めんぽう)と呼ばれる貯留物(ちょうりゅうぶつ)になります。
- 貯留物がたまっていき、丘疹(きゅうしん)という突起になります。
- さらに悪化するとアクネ菌が増殖し、炎症が起こり赤みが出てきます。この段階から痛みが生じることがあります。
- 炎症が進むと膿(うみ)がたまり膿疱(のうほう)と呼ばれる黄色いニキビになります。
つまり、ニキビができるきっかけは毛穴が皮脂や老廃物により詰まることなのです。
そのため、皮脂の産生が過剰になりがちなアブラ肌の人はニキビができやすいです。
また、ストレスは体内のホルモンバランスを崩し皮脂の産生を過剰にする傾向があるのでストレスを抱えやすい人もニキビになりやすいです。
一般的なニキビケア・予防方法
一般的に言われているニキビケアは、抗炎症作用のある基礎化粧液などでニキビ部分の炎症を抑えることや、肌を保湿することにより皮膚の自己回復力を高め、自然治癒させることが良しとされています。
他にはケミカルピーリング作用を利用して、特殊な溶剤により皮膚表面や毛穴部分の角質を剥がして、新しい角質を再生させる方法がありますが、刺激性が強いため敏感肌の人には向きません。
また、ニキビの予防方法は普段から皮脂がたまらないように適度に洗顔をして皮脂を落とし、睡眠をしっかりとりホルモンバランスを保つ、化粧液などでアクネ菌を殺菌し毛穴を引き締めるなどの方法が挙げられます。
パントテン酸とは?
ここでパントテン酸について説明します。
パントテン酸とは水溶性ビタミンであり、ビタミンB群に分類される栄養素です。
少し専門的になりますが、そもそもビタミンとは糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素、および無機質とともに必要とされる栄養素で、体内での様々な物質の代謝を助ける作用を持っています。
ビタミンは非常に少量でその効果を発揮しますが、ほとんどのビタミンは体内で合成することができないため、食事などにより体外から摂取する必要があります。
パントテン酸は例外的に腸内細菌によっても作られているので、通常時には体内から欠乏することはありませんが、抗菌薬の使用や食生活の乱れなどにより腸内細菌の数が減少している場合には積極的に取り入れる必要があります。
パントテン酸の具体的な働きは、グルコース(糖)やアミノ酸(タンパク質が分解されたもの)、脂質の代謝に関与する酵素を助けることや、体内でのエネルギー産生に関わる酵素を助けること、またコレステロールやホルモンの産生にも関わっています。
パントテン酸がなぜニキビケアに効果的なのか
パントテン酸がニキビケアや予防対策として注目されている理由は、コレステロールやホルモンの合成を助け、免疫抗体の産生にも関わっているため、粘膜や皮膚の状態を健康に保ち保護しようとする働きから、過剰に産生された皮脂を代謝してくれるからです。
洗顔や化粧液のように外側から無理やり皮脂を除去するのではなく、内側から皮脂を除去してくれるので、肌に与えるダメージも必然的に少なくなります。
また予防の面では脂質の代謝も行ってくれ、体内に余分な脂肪をためずにエネルギー産生の道具として消費し、皮脂がたまりにくい体質を作ってくれます。
ホルモンの産生にも関わっているので、摂取することによりホルモンバランスを保ち皮脂の過剰産生の予防に繋がります。
さらにはパントテン酸は、副腎という臓器から産生される抗ストレスホルモンであるコルチゾールの合成にも関わっています。
そのためパントテン酸にはストレスを緩和させる作用もありニキビのできにくい体質を作ってくれます。
パントテン酸によるニキビケアや予防効果について細かく説明しましたが、パントテン酸の大きなメリットはもうひとつあります。
それは水溶性ビタミンであるため、過剰摂取してしまう心配がいらないということです。
水溶性ビタミンはその名の通り水に溶けるため、体内で過剰になると速やかに尿中に排泄されるので、水分さえしっかり取っていれば体内に蓄積することがないのです。
パントテン酸を効率よく摂取するには
ここまでニキビケア、ニキビ予防対策としていかにパントテン酸が優れているかを述べてきましたが、実際にパントテン酸を効率よく体内に摂取するためにはどうすれば良いのでしょうか。
パントテン酸(またはビタミンB5)はサプリメント商品としても販売されていますが、なるべくお金をかけずにパントテン酸を取り入れたいという方は日々の食事を見直してみましょう。
パントテン酸の語源はギリシャ語でどこにでもある酸という意味で、その名が示す通りとても幅広い食品に含まれますが、中でも特に多く含んでいるのはレバーや納豆、牛乳、落花生、干しシイタケ、サケやイワシといった魚介類や肉類、卵などです。
それらを日常の食事の中に多く取り入れるのが良いでしょう。
次に調理法ですが、パントテン酸は熱に弱い性質を持っており加熱すると壊れてしまうため、調理によって約半分近くが失われてしまいます。
そのため加熱せずに食べられる生卵や納豆、落花生、牛乳などを食事に取り入れるのが効果的です。
また、加熱が必要な肉類や魚介類なども茹でたり炒めたりする代わりに、レンジで蒸すことにより短時間での調理が可能となりパントテン酸の損失が最小限に抑えられます。
また、パントテン酸はカフェインやアルコールにより体内への吸収が阻害されてしまうため、カフェインを含む飲み物やお酒などは極力控えたほうが良いでしょう。
パントテン酸とニキビ対策についてまとめ
ニキビができる原因となる皮脂の過剰産生、体内への脂質の蓄積、ホルモンバランスの崩れ、ストレスによる影響のすべてに有効的に働き、かつ副作用や留意点も少ないパントテン酸を、日々の食事を通して積極的に取り入れることがニキビの少ない美肌を手に入れる近道です。
ニキビやアブラ肌体質に悩んでいる方はぜひこの機会に試してみてはいかがでしょうか。